離職防止に効く施策|辞める理由から逆算して考える
2026.09.14 公開 | 監修:添田拓海(B2B推進部グループ長 / 福利厚生アドバイザー)

厚生労働省の調査によると、転職した方が前職を辞めた理由の上位は、給料・人間関係・労働時間の3つです。しかも1位は男女で入れ替わります。
離職防止の施策を12個や13個並べた記事はたくさんあります。ただ、そのうちどれが自社に効くのかまでは書かれていません。
打ち手を選ぶ順番は逆にしたほうが早く進みます。先に自社の人が辞める理由を見て、そこから逆算するほうが、候補はずっと絞れます。
この記事では、公的な調査で辞める理由を確認し、それを3つの束にまとめたうえで、束ごとに打ち手を割り当てる流れをご説明します。
まず、人が辞める理由を数字で見る
厚生労働省の令和6年雇用動向調査に、転職した方が前職を辞めた理由の調査結果があります。
理由 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
給料等収入が少なかった | 10.1% | 8.3% |
職場の人間関係が好ましくなかった | 9.0% | 11.7% |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 8.6% | 12.8% |
会社の将来が不安だった | 7.4% | 5.1% |
仕事の内容に興味を持てなかった | 4.4% | 3.6% |
能力・個性・資格を生かせなかった | 3.8% | 3.7% |
1位が男女で違います。 男性は給料が最も多く、女性は労働時間と休日です。この差は、打ち手を選ぶときに効いてきます。
なお、この調査で最も割合が大きいのは「その他の個人的理由」(男性20.2%、女性24.3%)と「定年・契約期間の満了」(男性14.1%、女性10.7%)です。前者は内訳が分からないため打ち手に落とせず、後者は制度上の区切りにあたります。そのため上の表では、企業側で手を打てる理由に絞っています。
自社で辞めた方の顔を思い浮かべると、どれに近かったでしょうか。
辞める理由は3つの束にまとめられる|お金・時間・人
上の6項目は、性質で見ると3つの束に整理できます。
束 | 該当する理由 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|
お金 | 給料等収入が少なかった | 10.1% | 8.3% |
時間 | 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 8.6% | 12.8% |
人 | 職場の人間関係が好ましくなかった | 9.0% | 11.7% |
3つを足すと、男性で27.7%、女性で32.8%になります。打ち手に落とせる理由のうち、大半がこの3つに入っているという見方ができます。
残りの「会社の将来が不安だった」「仕事の内容に興味を持てなかった」「能力・個性・資格を生かせなかった」は、仕事そのものに関する束です。重要ではあるものの、事業の方向や配置の話になるため、制度で短期に動かせる範囲を超えます。
束の重さも男女で違います。男性はお金が最も重く、女性は時間が最も重くなっています。人の束はどちらでも2位に入っており、ここだけは共通です。
束ごとに打ち手を逆算する
束が決まると、打ち手の候補は自動的に絞られます。
束 | 現場で起きていること | 逆算される打ち手 |
|---|---|---|
お金 | 同じような仕事で、他社のほうが条件が良く見える | 賃上げ。ただし原資が要る/昇給の基準を見せる/個人が負担している支出を下げる |
時間 | 休日が読めない、残業が特定の人に偏る | シフトを早めに確定する/繁忙期の人員配分を変える/休みを申請しやすくする |
人 | 上司との関係、評価への納得感 | 面談の頻度を上げる/配置転換の選択肢を持つ/評価する側の訓練 |
ここで注意したいのが、お金の束にある打ち手が、いちばん原資を必要とするという点です。賃上げは効きますが、続けられる金額でなければ意味がありません。
一方で時間と人の束は、費用よりも仕組みと運用の問題になります。シフトの確定を1週間早めることに、直接の費用はかかりません。
費用がかかる打ち手と、かからない打ち手を混ぜて並べると、比較ができなくなります。 施策を12個並べた一覧が使いにくいのは、この2種類が同じ列に並んでいるためです。
打ち手に順番をつける|全部やろうとしない
3つの束すべてに同時に手を出すと、どれも中途半端になります。順番をつけてください。
判断の材料になるのが、自社の従業員構成です。
女性が多い職場:時間の束が重くなりやすい。シフトと休日の設計から着手する
男性が多い職場:お金の束が重くなりやすい。昇給の基準を見せるところから着手する
どちらの職場でも:人の束は2位に入る。面談と評価は共通で効く
もちろん、これは全国の平均から言えることです。自社で辞めた方に聞き取りができるなら、そちらのほうが正確です。 平均はあくまで、聞き取りができないときの出発点とお考えください。
順番をつけると、今期にやることが1つか2つに絞れます。そこまで絞れれば、翌年に効果を確かめることもできます。
辞める理由に福利厚生は出てこない|それでも効く場所がある
ここまでの表をご覧になってお気づきかもしれませんが、辞めた理由の選択肢に「福利厚生」という項目はありません。
私たちは福利厚生のサービスを運営していますが、この点は正直にお伝えします。福利厚生を整えたから人が辞めなくなる、という直接の関係はありません。
効くとすれば、お金の束の一部です。給与そのものを上げなくても、従業員の皆さまが個人で支払っている費用が下がれば、手元に残る金額としては同じ方向に働きます。
私たちが運営している「SBC Wellness」も、この位置づけの選択肢です。企業様の導入費用・月額費用は0円で、従業員の皆さまは美容医療や審美歯科のほか、卵子凍結、視力矯正治療などのメニューを10%OFFの優待価格で利用できます。施術費用はご本人の負担です。
就業規則や規程の書き換えは不要です。 福利厚生として案内するところから始められます
申請の受付は発生しません。 従業員の皆さまが直接ご利用いただけます
対象はさまざまな雇用形態の方です。全国160院以上のネットワークがあり、41都道府県に展開しています
ご導入いただいているのは、中小規模で女性の比率が高い企業様が中心です。「女性の多い職場で喜んでもらえそうだから」という理由で導入を決めていただくケースが多くあります。
女性の継続就業を制度の面から進める場合は、法律が求める手順も関わってきます。何を把握し、どう計画に落とすかは女性活躍推進法とは?企業に求められる取り組みと進め方でご説明しています。
これで離職が止まるとは申し上げません。 3つの束のうち、お金の束に部分的に効く選択肢のひとつです。時間と人の束には別の打ち手が要ります。
▶ 関連記事:中小企業の福利厚生|自社の従業員構成から選ぶ
まとめ
人が辞める理由は、お金・時間・人の3つの束にまとめられます。束の重さは男女で違い、男性はお金、女性は時間が最も重くなります。
施策を数で集める前に、自社の従業員構成から重い束を1つ選び、そこに打ち手を寄せてください。 3つ同時には進みません。
福利厚生の位置づけを整理した記事もご用意しています。資料をダウンロードする
出典
補足
離職理由の数値は、厚生労働省「令和6年雇用動向調査」の「転職入職者が前職を辞めた理由」(表5)によります。転職した方への調査であり、離職者全体の調査ではありません
3つの束への分類は、当社が上記の調査項目を性質で整理したものです(調査の分類ではありません)。合計値も当社で算出しています
表に挙げた「現場で起きていること」「逆算される打ち手」は、一般に指摘されている論点を整理したものです
サービスの提供内容、ご導入企業の傾向、導入の理由に関する記述は、SBC Wellnessの提供実績にもとづくものです(2026年7月時点)
クリニック数は2026年5月時点の数値です
