人材定着率の上げ方|計算方法と入社後の時期ごとの打ち手
2026.10.13 公開 | 監修:添田拓海(B2B推進部グループ長 / 福利厚生アドバイザー)

新卒で入社した人のうち、3年以内に辞める人の割合は大学卒で33.8%、高校卒で37.9%です。従業員5人未満の事業所に限ると大学卒でも57.5%に上り、1,000人以上の事業所の27.0%と比べて2倍を超えます。
人数の少ない会社では、1人が辞めるだけで現場の仕事の回し方そのものが変わってしまいます。規模が小さい会社ほど定着率の課題が切実になるのも当然でしょう。
ただ、定着率が下がる原因と、そこに合わせて打つべき対策は、入社からの年数によってかなり違ってきます。まず定着率の計算方法を押さえたうえで、入社1年目から3年目までの時期ごとに、離職の傾向と打つべき手を厚生労働省の調査から読み解きます。
定着率の計算方法
定着率という言葉は人事の現場でよく使われますが、官公庁が定めた統一の計算式はありません。何を知りたいのかによって、次の2つを使い分けるのが実務的です。
知りたいこと | 計算式 | 例 |
|---|---|---|
入社した人がどれだけ残っているか | 一定期間後も在籍している入社者数 ÷ その期間の入社者数 × 100 | 10人入社して1年後に7人在籍していれば70% |
会社全体でどれだけ人が残っているか | 100 − 離職率(離職率=期間中の離職者数 ÷ 期首の在籍者数 × 100) | 期首50人のうち5人が辞めれば離職率10%、定着率90% |
表の2つめで使っている離職率は、厚生労働省の雇用動向調査と同じ考え方で計算したものです。令和7年の調査によると、全国の離職率は13.7%、内訳は一般労働者が11.4%、パートタイム労働者が19.9%でした。パートタイム労働者のほうが、約1.7倍高いことになります。
雇用形態でこれだけ差が開くと、会社全体の数字を1本で追うだけでは実態をつかみきれません。正社員とパート・アルバイトで分けて計算しておけば、どちらに手を打つべきかがはっきりしてくるはずです。
もうひとつ、人数の少ない会社では1人の退職だけで率が大きく動いてしまう点にもご注意ください。単年の数字で一喜一憂するよりも、3年程度の平均で傾向を見たほうが判断を誤りません。計算する時期と式は毎年そろえておき、人事の指標として推移を追っていきます。
入社後の時期によって、辞める人の割合は変わる
新卒で入社した人の離職率を、厚生労働省の調査から入社後の年数ごとに分けると次のとおりです。
在職期間 | 大学卒 | 高校卒 |
|---|---|---|
1年目 | 12.1% | 17.9% |
2年目 | 11.9% | 11.5% |
3年目 | 9.9% | 8.5% |
3年以内の合計 | 33.8% | 37.9% |
大学卒・高校卒のどちらを見ても、辞める人がいちばん多いのは入社1年目の時期にあたります。とくに高校卒は1年目で17.9%が辞めており、3年以内に辞める人のおよそ半数が最初の1年に集中しています。
ただ、大学卒は2年目も11.9%が辞めていて、1年目の12.1%とほとんど変わりません。入社直後を乗り切れば安心というわけではなく、時期ごとに違う手を用意しておく必要が出てきます。
時期ごとの打ち手
入社1年目|相談できる相手と、事前の説明をそろえる
若年者雇用実態調査で、勤続1年未満で辞めた人の理由として最も多かったのは「人間関係がよくなかった」でした。入社直後はまだ仕事の中身より、職場に相談できる人がいるかどうかが続くか辞めるかを分けてしまいます。
そこで最初にやっておきたいのが、配属先の上司とは別に相談相手を決めておくことです。月に一度でも業務の評価と切り離した場があれば、人間関係のつまずきは退職を決める前に表に出てきます。
採用時の説明と入社後の実態の差を小さくしておくことも、この時期の離職を減らしてくれます。仕事の大変な部分や繁忙期の働き方を面接の段階で具体的に伝えておけば、入社後に「聞いていた話と違う」という落差は生まれにくいはずです。
入社2年目|仕事と本人の相性を確かめる
仕事に慣れてくる2年目は、今の仕事が自分に合っているのかを本人が考え始める時期です。初めて勤めた会社を辞めた理由の上位にも、「仕事が自分に合わない」(21.7%)が入っていました。
この時期にやりたいのは、面談の場で本人の手応えと会社の期待を突き合わせ、ずれがないかを確かめることです。日々の仕事ぶりへのフィードバックも、評価の時期に限らずこまめに返したほうが、本人は手応えをつかみやすくなるでしょう。そして合わない部分が見えたときに担当業務や配置を見直せる余地を社内に残しておけば、転職ではなく社内の調整で片がつく場合が増えてきます。
入社3年目|働き方と待遇の見通しを示す
3年目に入ると仕事を一通り覚え、自分の働き方や待遇をほかの会社と比べられるようになります。辞めた理由の上位に並ぶのは「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(28.5%)と「賃金の条件がよくなかった」(21.8%)で、どちらも条件面に関わる項目でした。
ここでの打ち手はふたつに分かれ、ひとつは労働時間と休暇の取りやすさを数字で把握して、仕事と生活を両立しやすい形に整えておくことです。もうひとつは、昇給や役割の見通しをキャリアパスとして本人に示しておくことでしょう。すぐに給与や条件を変えられなくても、いつ・何ができれば待遇が上がるのかが分かれば、今の会社で続ける判断材料になります。
辞める理由を「お金・時間・人」の3つに分けて打ち手を組み立てる方法は、離職防止に効く施策|辞める理由から逆算して考えるで詳しく追いました。
福利厚生は、定着のどこに効くか
ここまで見てきた時期ごとの打ち手の中心にあるのは、相談の体制や面談、労働条件の見直しです。福利厚生がその代わりになることはありませんが、会社が従業員をどう扱っているかを示すものとして、定着の土台のほうを支えます。
福利厚生を整えるときに気をつけたいのは、雇用形態によって対象を分けてしまうことです。パートタイム労働者の離職率は一般労働者の約1.7倍あるので、正社員だけが使える制度では、いちばん辞める人が多い層に届きません。
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正社員とパート・アルバイトの比率ごとに合う制度の考え方は、中小企業の福利厚生|自社の従業員構成から選ぶでタイプ別に見ています。
まとめ
定着率は、入社した人の残り方を見るのか、会社全体の残り方を見るのかで計算式が変わります。正社員とパート・アルバイトを分けて計算し、3年程度の平均で傾向を追えば、手を打つべき場所が絞れてきます。
新卒で辞める人が最も多いのは入社1年目で、この時期の理由は人間関係が中心を占めます。2年目は仕事との相性へ、3年目は労働時間や賃金といった条件面へと、辞める理由の重心は移っていきます。時期ごとに打ち手を分けて用意しておくのが、定着率を上げるいちばんの近道になるはずです。
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出典
補足
新規学卒就職者の離職率は、令和4年3月卒業者(令和7年10月公表)の数値です。事業所規模別の数値は大学卒のものです
離職率は令和7年雇用動向調査(常用労働者5人以上の事業所が対象)の数値です
辞めた理由は、令和5年若年者雇用実態調査の「初めて勤務した会社を辞めた理由」(3つまでの複数回答)です
定着率の計算式は、本記事での実務上の整理です。官公庁が定めた統一の定義ではありません
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